頚椎症は、加齢に伴い首の骨(頚椎)が変形し、神経が圧迫されることで生じる病気の総称です。
圧迫される神経が腕へ伸びる神経根なのか、脊髄そのものなのかによって、症状の程度や対応の緊急度が異なります。
はるみクリニックの整形外科外来では、患者様お一人おひとりの症状の性質を確認し、治療をご提案します。
頚椎症の主な症状
上半身にみられる症状
✔ 首から肩、肩甲骨周辺にかけての痛み・重だるさ
✔ 首を後ろへ反らす、横へ向けると強くなる痛み
✔ 腕から手指にかけて広がる痛み、しびれ、感覚低下
✔ 物を持ちにくい、腕や手に力が入りにくいなどの筋力低下
✔ 箸やボタン、字を書く動作など手先の細かい動作が困難
下半身にみられる症状
✔ 足のしびれや感覚の鈍さ、足裏の違和感が続く
✔ 足がつっぱる、重い、もつれるなどの歩行時の違和感
✔ 階段の昇り降りや小走りでふらつき、転びやすくなる
✔ 足先が上がりにくく、すり足やつまずきが増える
✔ 尿が出にくい、残尿感、頻尿、尿意を我慢しにくい
圧迫される神経で異なる症状
腕の痛みやしびれが中心の場合|頚椎症性神経根症
首から腕へ伸びる神経の根元である「神経根」が圧迫されるタイプです。
片側の首・肩・腕・手指にかけて、痛みやしびれが広がることがあります。首を後ろに反らしたり、症状のある側へ傾けたりしたときに、腕へ痛みやしびれが響きやすい点が特徴です。
手足の動かしにくさがある場合|頚椎症性脊髄症
脊柱管の中を通る脊髄そのものが圧迫されるタイプです。
腕の痛みやしびれだけでなく、両手の細かな動作がしにくい、脚がもつれる、歩きにくいといった症状が現れることがあります。症状が進むと排尿・排便のしづらさを伴う場合もあるため、神経根症よりも慎重な評価と早めの対応が必要です。
手指と歩行の変化には要注意
頚椎症性脊髄症では、自覚しにくい変化として、手指の細かい動きのぎこちなさが現れることがあります。
【脊髄の圧迫を示すサイン】
- ボタンをとめにくい
- 箸で小さなものをつかみにくい
- 字の大きさがそろわない
また、以下のような症状がみられる場合、様子を見ずに早めに医療機関を受診してください。
【医療機関の受診が必要なサイン】
- 脚がもつれる
- 階段でふらつく
- 手足に力が入りにくい
- 排尿・排便がしづらい
頚椎症の主な原因・誘因
加齢に伴う頚椎の変化
椎間板が加齢とともに弾力や高さを失うと、周囲に骨棘(骨のとげ)が形成されることがあります。
こうした変化は神経の通り道を狭くし、神経根や脊髄の圧迫によって首・肩・腕の痛みやしびれにつながります。
前かがみ姿勢による負荷
スマートフォンやパソコンを見るためにうつむく姿勢が続くと、首を支える筋肉や頚椎の一部に負担が集中します。
直接の原因とは限りませんが、首や肩のこり・痛みをまねき、もともとの頚椎の変化による症状を強める一因となることがあります。
首への反復的な負荷
首を大きく動かすスポーツや、上を向く姿勢を長く続ける作業では、頚椎や周囲の筋肉に繰り返し負担がかかります。
負担の蓄積は首の痛みを引き起こすだけでなく、すでにある頚椎の変性による症状を悪化させることがあります。
頚椎症の診断・検査方法
整形外科外来では、首・肩・腕の痛みやしびれの現れ方に加え、手先の使いにくさ、歩きにくさなどを確認します。
診察では、首を動かした際の症状の変化を確認し、手足の筋力・感覚・反射を調べて、神経根と脊髄のどちらに影響が及んでいるかを判断します。
手指の動かしにくさや歩行の変化、排尿・排便の異常がみられる場合は、脊髄の圧迫が疑われるため、専門医療機関の受診が必要です。
当院で対応できない場合には、他院をご紹介する形となります。
頚椎症の主な治療法
薬物療法
消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンを用いて、首・肩・腕の痛みと炎症の軽減を図ります。
しびれや灼けるような痛みが目立つ場合には、神経障害性疼痛治療薬を症状、年齢、腎機能、併用薬などに応じて選択します。
薬剤は神経圧迫そのものを解消するものではありません。効果と副作用を定期的に確認し、症状の進行や生活障害が強い場合にはその他の治療を検討します。
トリガーポイント注射
痛みを避ける姿勢や筋緊張によって首・肩甲帯の筋肉に生じた圧痛点へ、局所麻酔薬などを注射する治療です。
筋の過緊張と痛みの悪循環を緩和し、首・肩周囲の局所痛、こり、可動域制限を軽減することを目的とします。
ただし、神経そのものの圧迫を解除する治療ではありません。筋力低下や手の巧緻運動障害、歩行障害など脊髄症を示唆する症状がある方は、専門的評価が必要です。
理学療法
当院ではリハビリ治療として、キセノン治療器による近赤外線を利用した温熱系の物理療法を導入しています。
キセノン光線治療は、深部組織を温めて血流を促し、首・肩周囲の筋緊張や痛みの軽減を補助するのが特徴です。皮膚から比較的深い部位まで熱を届けられるとされ、冷えや筋緊張を伴う頚肩部痛に、運動療法や薬物療法と併用されることがあります。
神経圧迫や脊髄圧迫を改善する治療ではないため、進行する筋力低下、手の不器用さ、歩行障害には物理療法のみで対応せず、速やかに再評価します。
漢方治療
頚椎症に伴う首・肩の痛み、こり、腕や手のしびれに対し、診察や必要な画像評価を行ったうえで、漢方治療を保存療法の一つとしてご提案します。
冷え、筋緊張、睡眠、胃腸の状態、体格、既往歴、服用中の薬などを確認し、葛根湯や桂枝加朮附湯などから一人ひとりの状態に合わせた処方を検討します。
鎮痛薬やリハビリテーションと併用することもありますが、副作用や薬の相互作用にも配慮し、治療効果と体調の変化を定期的に確認しながら継続・変更・中止を判断する形です。
手術が検討される場合
脊髄症の症状が進行し、手先の動作や歩行への影響が大きい場合には、脊髄への圧迫を取り除く手術を検討します。
神経根症であっても、保存的な治療を続けても症状の改善が乏しい場合には、手術が選択肢にあがることがあります。
手術が必要と考えられる場合は、脊椎の専門的な治療を行う医療機関と連携します。
頚椎への負担を軽減するための過ごし方
日常生活の姿勢や動作を見直すことで、首への負担を減らし、痛みやしびれの悪化を防ぎやすくなります。
✔ スマートフォンは目の高さに近づけ、うつむく時間を減らす
✔ パソコン作業では、画面の高さやいすの位置を調整する
✔ 高すぎる、低すぎる枕を避け、首の自然なカーブを保てる寝具を選ぶ
✔ 首を大きく後ろに反らす動作を、長時間続けないようにする
✔ 症状が強いときは、頚椎カラーなどの装具で首を支える
ただし、しびれや筋力低下が進む、手先が使いにくい、歩きにくいといった症状がみられる方は早めに整形外科へご相談ください。
頚椎症でよくあるご質問
Q1|しびれだけでも整形外科を受診したほうがよいですか?
A1|片側の腕や手にしびれが続く、範囲が広がる、痛みや脱力を伴う場合は、整形外科での診察をおすすめします。特に両手足のしびれ、手先の使いにくさ、歩きにくさを伴う場合は脊髄症の可能性もあるため、早めにご相談ください。
Q2|枕の高さは症状に影響しますか?
A2|高すぎる枕は首が前に傾いた状態を長時間つくり、頚椎への負担が増える場合があります。仰向けで自然な首のカーブを保てる高さを選ぶことがすすめられます。
Q3|スパーリングテストとはどのような検査ですか?
A3|首を後ろに倒し、症状のある側に傾けながら圧をかけ、腕への痛みやしびれが強まるかを確認する検査です。神経根が刺激を受けているかどうかの判断材料になります。
Q4|頚椎症は自然に良くなることがありますか?
A4|腕の痛みやしびれを主症状とする神経根症は、時間の経過とともに改善することが多く、回復まで数か月を要する場合もあります。一方で、症状が悪化する、筋力低下が目立つ、手先の細かな動作や歩行に影響が出る場合は、自然な回復を待たずに再評価が必要です。
Q5|手の動かしにくさを感じたらすぐに受診すべきですか?
A5|「ボタンをとめる」「箸を使う」といった動作のしづらさは、脊髄が圧迫されているサインのひとつである可能性があります。様子を見ずに、早めの受診をおすすめします。