膝の裏側に痛みを感じたとき、多くの方は「そのうち治るだろう」と様子を見てしまいがちです。
しかし、痛みの背景には、運動による一時的な負担だけでなく、靭帯や半月板の損傷、関節リウマチなど、注意が必要な病気が隠れていることもあります。
この記事では、膝の裏側に痛みが出る背景や、見分け方のポイント、自宅でのケア方法、受診の判断基準を解説します。
なぜ膝の裏側が痛くなるのか

膝の裏側には多くの筋肉・腱・靭帯が集まっており、負担のかかり方によって痛みの出方も変わってきます。
ここでは、膝の裏側が痛くなる原因について詳しく解説します。
運動・スポーツによる負荷の蓄積
ランニングやジャンプ、しゃがむ動作を繰り返すと、膝の裏側に負担が蓄積し、痛みにつながることがあります。
膝は歩行や運動のたびに体重を支えており、特に普段より活動量が増えたときは、関節や靭帯、腱、筋肉への負担も大きくなりやすいです。
たとえ激しい運動をしていなくても、重いものを持ったり長距離を歩いたりすると膝に負荷がかかるため、痛みにつながる可能性があります。
運動後に膝の裏側が痛む場合は、単なる疲労と決めつけず、痛みが続く期間や腫れ、押したときの痛みなども確認しましょう。
加齢による関節・軟骨の変化
加齢とともに、膝関節のクッションの役割を果たす軟骨が徐々にすり減っていくことがあります。
軟骨がすり減ると関節の隙間が狭くなり、骨どうしが接触しやすくなるため、膝の裏側を含めた広い範囲に痛みやこわばりが生じることがあります。
立ち上がる際や歩き始めに痛みを感じやすい場合は、加齢による関節の変化が関係している可能性もあるでしょう。
軟骨は一度すり減ると元に戻りにくい組織のため、症状が軽いうちから膝への負担を見直すことが大切です。
姿勢や歩き方による負担の集中
膝には多くの筋肉や腱が集まっており、姿勢や歩き方によって特定の部分に負担が集中することがあります。
反り腰や膝を伸ばしきる歩き方の癖があると、膝裏の筋肉や腱が引き伸ばされた状態になりやすく、慢性的な張りや痛みにつながることがあります。
足の内側や外側へ体重が偏る癖がある場合も、一部分に繰り返し力が加わりやすいです。
長く歩くといつも同じ場所が痛む場合や、靴底の片側だけが極端にすり減っている場合は、姿勢や歩き方の癖が影響していないか確認してもらうとよいでしょう。
注意したい膝裏の病気・ケガ

痛みの出方や腫れの有無によって、病気やケガが関係している可能性があります。
ここでは、膝裏の痛みに関係する病気やケガについて解説します。
ベーカー嚢腫
ベーカー嚢腫は、膝関節を包む滑膜から分泌される滑液が、膝の裏側に袋状にたまって腫れる状態です。
変形性膝関節症や半月板損傷などが背景にあり、関節内の炎症によって滑液の分泌が増えることで生じやすいとされています。
膝の裏側にしこりのような腫れが触れる、正座やしゃがむ動作で圧迫感や痛みを感じるといった症状が特徴です。
腫れが大きくなったり、痛みが続いたりする場合は、整形外科で原因を確認しましょう。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、加齢などにより膝関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が生じる病気です。
歩行時や立ち上がる際に膝の痛みが出やすく、進行すると膝の裏側を含めた広い範囲にこわばりや腫れが生じることもあります。
関節の隙間が狭くなることで、O脚などの変形を伴う場合もあるとされています。
症状が進行する前に、整形外科での相談をおすすめします。
半月板損傷
半月板は、膝関節にある軟骨組織で、クッションのように衝撃を吸収する役割を持っています。
スポーツ中に膝をひねったり、加齢によって半月板がもろくなったりすることで損傷が起こることがあります。
膝の曲げ伸ばし時に引っかかる感覚や、膝裏を含めた痛み、正座がしづらくなるといった症状が特徴です。
損傷の程度によっては、膝に水が溜まる場合もあります。
靭帯損傷(後十字靭帯損傷など)
膝の裏側を通る後十字靭帯は、スポーツ中の強い衝突や、転倒による膝への負荷で損傷することがあります。
損傷すると、膝裏の痛みに加えて、膝の不安定感やぐらつきを感じることがあります。
軽い損傷では自覚しにくいこともありますが、放置すると膝の不安定感が続き、日常生活やスポーツ活動に影響することも少なくはありません。
スポーツ中の衝突や転倒のあとから膝裏の痛みが続く場合は、靭帯損傷の可能性も考えて医療機関に相談しましょう。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に慢性的な炎症が起こる疾患です。
膝の関節にも症状が現れることがあり、膝の裏側を含めた腫れや痛み、朝起きたときのこわばりを感じることがあります。
左右の膝に同時に症状が出やすいことも特徴の一つです。
進行すると関節の変形につながる可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
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深部静脈血栓症
深部静脈血栓症は、脚の深い部分を通る静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気です。
長時間同じ姿勢を続けた後などに起こりやすく、片側の膝裏からふくらはぎにかけての痛みや腫れ、むくみ、熱感を伴うことがあります。
外見からは他の膝のトラブルと区別しにくいこともありますが、血栓が血流によって肺に達すると、命に関わる重篤な状態を引き起こすこともあるため、特に注意が必要な病気です。
片側の急な腫れや痛みが続く場合は、自己判断で様子を見ず、早急に医療機関を受診してください。
膝の裏側が痛いときに自宅でできるセルフケア

膝の裏側に痛みがあるときは、無理に動かさず、まず負担を減らすことが大切です。ここでは、自分でできる主な対処法を解説します。
運動や長時間の歩行を控える
膝の裏側に痛みがある間は、ランニングやスポーツ、長時間の歩行など、痛みが強くなる動作をできるだけ控えましょう。
無理に動かし続けると、靭帯や半月板への負担が増え、症状が悪化するおそれがあります。
ただし、数日休んでも改善しない、歩くだけでも強く痛む、腫れが続くといった場合は、単なる使いすぎではない可能性も考えられます。
症状を我慢して運動を再開せず、整形外科などで原因を確認することが大切です。
腫れや熱感がある場合は冷やす、こわばりには温める
運動後に膝の裏側が腫れている、触ると熱を持っているといった場合は、患部を冷やすことで痛みや腫れを和らげられることがあります。
氷や保冷剤をタオルで包み、皮膚に直接当てないようにしながら、短時間ずつ冷却するのが基本です。
ただし、冷やせばすべての痛みが改善するわけではありません。慢性的なこわばりや血行不良が関係している場合など、症状によって適した対応は異なります。
長時間冷やし続けると凍傷につながるおそれがあるため、時間を区切って行いましょう。
強く揉んだりストレッチしたりしない
膝の裏側が痛いときに、自己判断で強く揉んだりストレッチしたりするのは避けましょう。
筋肉の疲労が原因であれば軽いケアが役立つこともありますが、靭帯損傷や半月板損傷、深部静脈血栓症などが起きている場合は、強い刺激によって症状を悪化させるおそれがあります。
特に押すと一点だけ強く痛む、片側だけ急に腫れている、動かしたときに鋭い痛みが出るときは注意が必要です。
原因が分からない痛みや症状が長引く場合は、医療機関で状態を確認したうえで適切なケア方法を相談しましょう。
こんな場合は医療機関を受診しましょう

膝の裏側の痛みが続く場合、靭帯損傷や関節リウマチ、深部静脈血栓症などが隠れていることもあるため、痛みの強さや腫れの有無を確認することが大切です。
次のような症状がある場合は、整形外科などの医療機関への受診を検討してください。
- 痛みが強く、膝に体重をかけるのが難しい
- 数日間安静にしても痛みが改善しない
- 膝の裏側が大きく腫れている、しこりのような腫れが触れる
- 片側の膝からふくらはぎにかけて急に腫れ、熱感がある
- スポーツや転倒のあとから膝裏の痛みや不安定感が続いている
- 膝に引っかかる感覚があり、正座がしづらい
- 朝起きたときに膝のこわばりを感じる、左右対称に腫れている
特に、片側の急な腫れや強い痛みは、深部静脈血栓症などの緊急性の高い病態が隠れている可能性もあるため、早めの受診が必要です。
膝の裏側の痛みでよくあるご質問
Q.何科を受診すればよいですか?
A.基本的には整形外科が適しています。
ただし、片側の急な腫れや熱感など、深部静脈血栓症が疑われる症状がある場合は、早急に医療機関(救急外来など)を受診してください。
Q.痛みがあるときに運動は続けてもよいですか?
A.痛みが強い間は運動を控えることをおすすめします。無理に続けると、靭帯や半月板への負担が増え、症状が悪化するおそれがあります。
Q.放置するとどうなりますか?
A.原因によっては、痛みや腫れが強まったり、膝の不安定感が続いたりすることがあります。
深部静脈血栓症のように緊急性の高い病気が関係している場合もあるため、症状が続くときは早めの受診を検討しましょう。
Q.マッサージや整体で改善しますか?
A.筋肉の疲労が原因であれば、軽いケアが役立つこともあります。
しかし、靭帯損傷や半月板損傷などが起きている場合、強い刺激によって症状を悪化させるおそれがあるため、自己判断でのケアは避け、医療機関で状態を確認しましょう。
Q.片方の膝だけ痛むのは何か問題がありますか?
A.片側だけに症状が出る場合、スポーツによる損傷や、片側の血管に問題が生じる深部静脈血栓症などが考えられます。
左右差がある場合は、原因を確認するため受診をおすすめします。
まとめ
膝の裏側の痛みは、日常的な負担で起こることもありますが、ベーカー嚢腫や靭帯損傷、関節リウマチなど、注意が必要な病気が関係している場合もあります。
軽い痛みであれば運動や長時間の歩行を控えて様子を見ることもできますが、強い痛みや腫れ、片側だけの急な症状がある場合は注意が必要です。
原因によって適切な対処法や治療は異なるため、痛みを我慢して無理に動かし続けるのは避けましょう。
「はるみクリニック」では、関節痛やスポーツ障害、難治性疼痛など幅広い膝の症状に対応し、診察や必要に応じた検査をもとに治療方針を検討しています。
膝の裏側の痛みが続いている方や、腫れやこわばりが気になる方は、現在の症状についてお気軽にご相談ください。