肘に痛みを感じたとき、多くの方は「使いすぎたのだろう」と様子を見てしまいがちです。
肘が痛む要因としては、一時的な負担だけでなく、神経の障害や関節の変形など、注意が必要な病気が隠れていることもあります。
ここでは、肘に痛みが出る背景や、自宅でのケア方法、受診の判断基準を解説します。
なぜ肘が痛くなるのか

肘には、腕を曲げ伸ばしする筋肉や腱、神経が集中しており、負担のかかり方によって痛みの出方も変わってきます。
ここでは、肘が痛くなる主な原因について解説します。
使いすぎ・繰り返し動作による負担
テニスやゴルフなどのスポーツ、パソコン作業や家事など、手首や腕を繰り返し使う動作を続けると、肘の腱に負担が蓄積して痛みにつながることがあります。
特に、手首を反らせる動作や、ものをつかんで持ち上げる動作を繰り返す仕事・スポーツでは、肘の外側や内側に負担がかかりやすいとされています。
たとえ強い衝撃を受けていなくても、同じ動作の繰り返しによって腱に小さな損傷が積み重なり、痛みにつながることもあるでしょう。
使用後に肘が痛む場合は、単なる疲労と決めつけず、痛みが続く期間や、力を入れたときの痛みの強さも確認しましょう。
思い当たる負担が続いている場合、症状が軽いうちに動作を見直すことをおすすめします。
加齢による組織の変化
加齢とともに、肘関節の軟骨や、神経の通り道である靭帯・骨のトンネルの形状が変化していくことがあります。
軟骨がすり減ると関節の隙間が狭くなります。骨どうしが接触しやすくなるため、肘の曲げ伸ばしをした際に痛みや引っかかりが生じる仕組みです。
また、加齢に伴う骨の変形によって、肘の内側を通る神経が圧迫されやすくなることもあるとされています。
安静にしていても違和感が続く、肘の動く範囲が狭くなってきたと感じる場合は、加齢による変化が関係している可能性があります。
姿勢や動作の癖による負担の集中
肘には多くの筋肉や腱、神経が集まっており、姿勢や動作の癖によって特定の部分に負担が集中することがあります。
肘を伸ばしきったまま作業を続けたり、机の上で肘をつく癖があったりする場合、特定の腱や神経に繰り返し力が加わりやすいです。
利き手側だけに負担が偏っている場合も、同じ部分に痛みが出やすくなるとされています。
特定の動作をしたときだけ痛みが出る場合や、決まった姿勢を続けると違和感が強まる場合は、動作の癖が影響していないか確認してもらうとよいでしょう。
注意したい肘の病気・ケガ

肘の痛みが続く場合、腱や神経、関節などに異常が生じている可能性があります。
ここでは、肘の痛みが続く場合の病気やケガについて解説します。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
上腕骨外側上顆炎は、肘の外側にある腱に炎症が生じる状態です。
テニスのバックハンドのような手首を反らせる動作の繰り返しで起こりやすいことから、「テニス肘」と呼ばれていますが、パソコン作業や家事などでも起こることがあります。
タオルを絞る動作や、ドアノブを回す動作など、手首を反らせる・ひねる動作で肘の外側に痛みが出ることが特徴です。
症状が軽いうちは安静にすることで改善する場合もありますが、繰り返し負担をかけ続けると症状が長引くことがあります。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
上腕骨内側上顆炎は、肘の内側にある腱に炎症が生じる状態です。
ゴルフのスイング動作で起こりやすいことから「ゴルフ肘」と呼ばれますが、重い荷物を持つ動作や、投球動作の繰り返しでも生じることがあります。
手首を手のひら側に曲げる動作や、ものを強く握る動作で肘の内側に痛みが出ることが特徴です。
テニス肘と似た仕組みですが、痛みが出る場所が肘の内側である点が異なります。
肘部管症候群
肘部管症候群は、肘の内側にある「肘部管」というトンネルの中を通る神経(尺骨神経)が、圧迫されることで生じる病気です。
肘をぶつけたときに小指側にピリッとした痛みが響く経験がある方も多いですが、その神経が慢性的に圧迫されると、小指や薬指のしびれ、感覚の鈍さが続くことがあります。
進行すると、指の細かい動作がしづらくなったり、手の筋肉が萎縮したりすることもあるとされています。
肘を曲げた状態を長く続ける習慣がある方や、過去に肘を骨折・脱臼したことがある方は注意が必要です。
変形性肘関節症
変形性肘関節症は、加齢や使いすぎなどにより肘関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が生じる病気です。
肘の曲げ伸ばし時の痛みや、関節が完全に伸びきらない・曲がりきらないといった動きの制限が生じることがあります。
進行すると、骨の変形により神経が圧迫され、しびれを伴う場合もあるとされています。
重量物を扱う作業やスポーツを長年続けてきた方に多く見られる傾向があります。
骨折・脱臼
転倒して手をついたときや、肘に強い衝撃が加わったときに、骨折や脱臼が生じることがあります。
骨折では強い痛みや腫れ、内出血が現れやすいものの、症状だけで打撲や捻挫と区別するのは難しく、画像検査が必要になることもあります。
脱臼の場合、肘の見た目が明らかに変形し、動かすことが難しくなるのが特徴です。
ぶつけた覚えがないから大丈夫とは限らないため、強い痛みや腫れがある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
自宅でできる肘の痛みのセルフケア

肘に痛みがあるときは、無理に動かさず、まず負担を減らすことが大切です。ここでは、自分でできる主な対処法を解説します。
動作を控え、安静にする
肘に痛みがある間は、痛みが強くなる動作(手首を反らせる、ものを強く握る等)をできるだけ控えましょう。
無理に動かし続けると、腱や神経への負担が増え、炎症が長引く可能性があります。
仕事やスポーツで同じ動作を繰り返している場合は、一時的に休むか、動作のやり方を見直すことも大切です。
ただし、数日休んでも改善しない、しびれが続くといった場合は、単なる使いすぎではない可能性も考えられます。
腫れや熱感がある場合は患部を冷やす
肘が腫れている、触ると熱を持っているといった場合は、患部を冷やすことで痛みや腫れを和らげられることがあります。
氷や保冷剤をタオルで包み、皮膚に直接当てないようにしながら、短時間ずつ冷却するのが基本です。
慢性的なこわばりや血行不良が関係している場合は、温めることで筋肉がほぐれ、症状が和らぐこともあります。
強い腫れや内出血がある、変形して見える場合は、骨折や脱臼の可能性もあるため、冷やしながら早めに受診してください。
サポーターの使用や動作の見直し
テニス肘やゴルフ肘では、市販のサポーター(バンド)を使うことで、腱への負担を軽減できる場合があります。
ただし、サポーターはあくまで補助的なもので、痛みの原因そのものを治すものではありません。
道具の握り方やフォームに癖がある場合は、見直すことで再発を防げることもあります。
症状が改善しない場合や、しびれを伴う場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談しましょう。
こんな場合は医療機関を受診しましょう

肘の痛みが続く場合、神経の障害や関節の変形、骨折などが隠れていることもあるため、痛みの強さやしびれの有無を確認することが大切です。
次のような症状がある場合は、整形外科などの医療機関への受診を検討してください。
- 痛みが強く、腕に力を入れるのが難しい
- 数日間安静にしても痛みが改善しない
- 肘が大きく腫れている、変形して見える
- 小指や薬指にしびれや感覚の鈍さがある
- 転倒やスポーツなどのあとから痛みが続いている
- 肘の曲げ伸ばしがしづらい、動く範囲が狭くなっている
- 指の細かい動作がしづらくなってきた
特に、明らかな変形や強いしびれを伴う場合は、早めの受診が必要です。
肘の痛みでよくあるご質問
Q.何科を受診すればよいですか?
A.基本的には整形外科が適しています。しびれが強い場合や、指の動かしにくさを伴う場合は、神経の障害が関係している可能性もあるため、早めにご相談ください。
Q.サポーターをつけていれば運動を続けても大丈夫ですか?
A.サポーターは負担を軽減する補助的な役割であり、痛みの原因を治すものではありません。痛みがある間は、動作量を減らすことをおすすめします。
Q.放置するとどうなりますか?
A.原因によっては、痛みが慢性化したり、しびれや筋力の低下が進んだりすることがあります。症状が続くときは、早めに原因を確認することが大切です。
Q.子どもでも同じような肘の痛みが起こりますか?
A.お子様の場合、成長期特有の骨や軟骨のトラブルが原因となることもあります。大人と原因が異なる場合があるため、診察時にご相談ください。
Q.マッサージで改善しますか?
A.筋肉の疲労が原因であれば、軽いケアが役立つこともあります。
しかし、神経の圧迫や骨折などが起きている場合、強い刺激によって症状を悪化させるおそれがあるため、自己判断でのケアは避けましょう。
まとめ
肘の痛みは、使いすぎによる一時的な負担で起こることもありますが、上腕骨外側上顆炎や肘部管症候群、変形性肘関節症など、注意が必要な病気が関係している場合もあります。
軽い痛みであれば動作を控えて様子を見ることもできますが、しびれや変形、強い痛みがある場合は注意が必要です。
原因によって適切な対処法や治療は異なるため、痛みを我慢して無理に動かし続けるのは避けましょう。
「はるみクリニック」では、関節痛やスポーツ障害、骨折・打撲・捻挫、難治性疼痛など幅広い肘の症状に対応し、診察や必要に応じた検査をもとに治療方針を検討しています。
肘の痛みが続いている方や、しびれが気になる方は、現在の症状についてお気軽にご相談ください。