後頭部の痛みは、多くの場合、筋肉の緊張や神経の刺激によって起こる、心配の少ないものです。
一方で、まれに脳の血管や脳自体の病気が関係しているケースもあり、痛みの現れ方によっては注意が必要です。
ここでは、後頭部に痛みが出る背景や、自宅でのケア方法、受診の判断基準を解説します。
なぜ後頭部が痛くなるのか

後頭部からうなじにかけては、首や肩の筋肉が多く付着しており、姿勢や生活習慣による影響を受けやすい部位です。
ここでは、後頭部が痛くなる主な原因について解説します。
長時間の同一姿勢による筋肉の緊張
デスクワークやスマートフォンの操作などで長時間同じ姿勢を続けると、首や後頭部の筋肉に負担がかかり、血流が悪くなることがあります。
血流が悪くなった筋肉には疲労物質がたまりやすく、これが神経を刺激することで、後頭部から首にかけての重い痛みにつながるとされています。
このタイプの痛みは、頭全体をベルトで締め付けられるような重苦しさが特徴で、数時間から数日間続くこともあるでしょう。
こまめに姿勢を変えたり、休憩を挟んだりすることで、症状の軽減が期待できるとされています。
精神的なストレスによる影響
強いストレスや緊張状態が続くと、自律神経の働きが乱れ、痛みに対する感覚が過敏になることがあるとされています。
身体的な負担がそれほど大きくなくても、精神的な要因が重なることで、後頭部の痛みが強く感じられる場合があります。
肩こりや首のこわばりを併発しているケースも多く、心身両面からの負担が影響していると考えられている症状です。
神経の圧迫・刺激
後頭部の皮膚感覚をつかさどる神経(後頭神経)が、筋肉の緊張や姿勢の悪さによって圧迫・刺激されることがあります。
猫背や首の骨の変形、長時間のデスクワークなどにより血流が悪化し、筋肉がこわばることで、神経が刺激されやすくなるとされています。
このタイプの痛みは、「ズキッ」「ビリッ」とした電気が走るような鋭い痛みが特徴です。髪をとかす動作や頭皮に触れるだけで痛みが誘発されることもあります。
血管の拡張による痛み
血管が拡張することで、周囲の神経が刺激されて痛みが生じるタイプもあります。
ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、体を動かすと悪化しやすく、吐き気を伴うこともあるとされているケースです。
肩こりや首こりの症状が先行し、その後に痛みが強まっていくケースも見られます。
後頭部の痛みで注意したい病気の種類

後頭部の痛みの多くは心配の少ないものですが、痛みの性質や伴う症状によって、さまざまな病気が関係している可能性があります。
ここでは、後頭部が痛いときに注意したい病気について詳しく解説します。
後頭神経痛
後頭神経痛は、頭の表面近くを通る後頭神経が、筋肉の緊張や姿勢の悪さなどによって圧迫・刺激されることで生じる神経痛です。
猫背や長時間のパソコン・スマートフォン操作、ストレスなどによって血流が悪化し、筋肉が緊張することが主な原因とされています。
片側に「ズキッ」「ビリッ」と電気が走るような、数秒から数分程度の鋭い痛みが特徴で、痛みのない時間をはさみながら発作的に繰り返すこともあります。
髪をとかす、頭皮に触れる、首を動かすといった動作で痛みが誘発されやすいことも特徴の一つです。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、後頭部の痛みの中で最も頻度が高いタイプとされています。
はっきりした原因は明らかになっていないものの、長時間のデスクワークやスマートフォン操作による姿勢の崩れ、精神的・身体的なストレスが複雑に関係して起こると考えられています。
頭全体や後頭部を締め付けられるような重苦しい痛みが特徴で、数時間から数日間続くこともあるでしょう。
肩や首のこりを伴うことが多く、目の疲れや疲労、睡眠不足も誘因になるとされています。
片頭痛
片頭痛は、血管の拡張が関係していると考えられている頭痛です。
ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、体を動かすと痛みが悪化しやすく、吐き気や光・音への過敏さを伴うこともあります。
後頭部から首の付け根にかけて痛みが出るケースも少なくなく、緊張型頭痛と症状が似ている部分もあるため、自己判断での区別が難しい場合もあります。
脳血管疾患(くも膜下出血・脳出血・脳梗塞など)
頻度としてはまれですが、くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などの脳血管疾患でも、後頭部の痛みが現れることがあります。
くも膜下出血は、脳を覆うくも膜の内側で出血する病気で、脳動脈瘤の破裂が代表的な原因です。
「バットで殴られたような」これまでに経験したことのない激しい痛みが、突然、短時間でピークに達することが特徴とされています。
手足のしびれや麻痺、ろれつが回らない、意識がはっきりしないといった症状を伴う場合は、脳梗塞や脳出血の可能性も考えられます。
このような症状がある場合は、命に関わる可能性があるため、救急外来の受診が必要です。
椎骨動脈解離
椎骨動脈解離は、首から脳に向かって血液を送る動脈の壁が裂ける、または剥がれることで生じる病気です。
比較的若い方にも起こることがあり、首の付け根から後頭部にかけて、これまでに経験したことのない激しい痛みが突然生じることが特徴です。
血管の壁が裂けることで、その先の脳への血流が不足し、脳梗塞やくも膜下出血につながる場合もあるとされています。
首を動かした際に片側の痛みが強くなる、めまいや物が二重に見える、しびれを伴うといった症状がある場合は、注意が必要です。
後頭部が痛いときに自宅でできるセルフケア

後頭部の痛みの多くは、生活習慣の見直しやセルフケアによって和らぐことがあります。ここでは、自分でできる主な対処法を解説します。
姿勢を見直し、こまめに休憩を取る
長時間同じ姿勢を続けることは、首や後頭部の筋肉に負担をかける大きな要因です。
デスクワークやスマートフォンの操作を続けている場合は、1時間に1回程度を目安に休憩を挟み、姿勢を変えることを心がけましょう。
パソコンの画面の高さを調整したり、スマートフォンを目線の高さに近づけたりすることも、首への負担軽減につながります。
首や肩を温める
緊張型頭痛が疑われる場合、首や肩を温めることで血流が改善し、筋肉の緊張がほぐれて痛みが和らぐことがあります。
蒸しタオルや入浴などで、無理のない範囲で温めるとよいでしょう。
一方、片頭痛のようにズキズキと脈打つ痛みの場合は、温めるとかえって痛みが強まることがあるため、冷やして安静にする方が向いているとされています。
痛みの種類によって適した対処が異なる点には注意が必要です。
軽いストレッチや適度な運動
首や肩周りの軽いストレッチは、筋肉の緊張をやわらげ、血流を促す効果が期待できます。
ただし、後頭神経痛が疑われる場合、強く頭皮や後頭部を刺激すると痛みが誘発されることもあるため、無理に動かしたり強く押したりしないよう注意しましょう。
痛みが強いときは安静を優先し、症状が落ち着いてから軽い運動を取り入れることをおすすめします。
市販の痛み止めの使用
緊張型頭痛や片頭痛では、市販の鎮痛薬で痛みが和らぐこともあります。
ただし、痛み止めを頻繁に使用し続けると、かえって頭痛が悪化する場合があるとされており、自己判断での連用は避けましょう。
痛みが続く場合や市販薬で改善しない場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談してください。
こんな場合は医療機関を受診しましょう

後頭部の痛みの多くは心配の少ないものですが、以下のような症状がある場合、命に関わる病気が関係している可能性があります。
- 突然、これまでに経験したことのない激しい痛みが起こった
- 「バットで殴られたような」痛みが一気に強まった
- 手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないといった症状を伴う
- めまいや物が二重に見える症状がある
- 首を動かすと片側の痛みが強くなる
- 意識がはっきりしない、強い吐き気や嘔吐を伴う
- 痛みが日ごとに強くなっている
上記に該当する場合は、自己判断で様子を見ず、直ちに救急外来を受診してください。
一方で、以下のような場合は、緊急性は低いものの、医療機関での相談をおすすめします。
- 電気が走るような鋭い痛みが繰り返し起こる
- 髪をとかす、頭皮に触れるだけで痛みが誘発される
- 痛み止めを使っても改善しない、または頻繁に使用している
- 痛みが長期間続いている、徐々に悪化している
後頭部の痛みでよくあるご質問

ここでは、後頭部の痛みに関するよくある質問を紹介します。
Q.何科を受診すればよいですか?
A.後頭神経痛や緊張型頭痛が疑われる場合は、「はるみクリニック」の痛み外来にてご相談いただけます。
突然の激しい痛みや、しびれ・麻痺などの症状を伴う場合は、脳神経外科など専門の医療機関を受診してください。
Q.後頭部の痛みは自然に治りますか?
A.筋肉の緊張によるものであれば、姿勢の見直しやセルフケアで軽減することもありますが、繰り返す場合や長引く場合は、原因を確認するため受診をおすすめします。
Q.後頭神経痛はどのような治療を受けられますか?
A.症状に応じて、内服薬による治療や神経ブロックなどを検討します。詳しくは診察時にご説明します。
Q.痛み止めはどのくらいの頻度で使ってもよいですか?
A.市販薬を頻繁に使用し続けると、かえって頭痛が悪化することがあります。使用頻度が増えている場合は、自己判断を避け、医療機関にご相談ください。
Q.ストレスと後頭部の痛みは関係がありますか?
A.強いストレスは、痛みに対する感覚を過敏にさせたり、筋肉の緊張を強めたりすることがあり、後頭部の痛みに影響すると考えられています。
まとめ
後頭部の痛みは、多くの場合、緊張型頭痛や後頭神経痛といった、筋肉や神経の緊張によるものです。
一方で、まれにくも膜下出血や椎骨動脈解離のような、命に関わる病気が隠れていることもあり、痛みの現れ方によっては注意が必要です。
突然の激しい痛みや、しびれ・麻痺などの症状がある場合は、直ちに救急外来を受診してください。
「はるみクリニック」の痛み外来では、後頭神経痛や緊張型頭痛などの症状と真剣に向き合い、診断結果に応じて適切な治療をご提案しています。
また、必要に応じて脳神経外科など他診療科と連携することもあります。
後頭部の痛みが繰り返し起こる、電気が走るような痛みがあるといった方は、現在の症状についてお気軽にご相談ください。