こめかみの痛みは、多くの場合、片頭痛や緊張型頭痛など、脳そのものに異常のない頭痛によって起こります。
一方で、まれに側頭動脈炎や脳の病気が関係しているケースもあり、痛みの現れ方によっては注意が必要です。
ここでは、こめかみに痛みが出る背景や、自宅でのケア方法、受診の判断基準を解説します。
なぜこめかみが痛くなるのか

こめかみには側頭筋という筋肉や、側頭動脈という血管が通っており、これらの緊張や拡張が痛みに関係するとされています。
ここでは、こめかみが痛くなる主な原因について解説します。
血管の拡張による痛み
こめかみ周辺の血管が拡張すると、周囲の神経が刺激されて痛みが生じることがあります。
正確な仕組みは完全には解明されていないものの、要因の一つとして挙げられるのが、顔の感覚をつかさどる三叉神経が関与しているという説です。
何らかの刺激によって神経伝達物質が分泌され、血管が拡張し、その周囲に炎症が起こると考えられています。
ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、体を動かすと悪化しやすく、光や音に敏感になったり、吐き気を伴ったりすることもあるでしょう。
ストレスや睡眠不足・寝過ぎ、気圧の変化、疲労、空腹、強い光や匂いなどが誘因になるとされています。
筋肉の緊張による痛み
長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などで同じ姿勢を続けると、首や肩、こめかみ周辺の筋肉が緊張し、血流が悪くなることがあります。
血流が悪くなった筋肉には疲労物質がたまりやすく、これが神経を刺激することで、こめかみを含めた頭全体の重い痛みにつながるとされています。
「頭をバンドで締め付けられているような痛み」と表現されることが多く、こめかみから頭全体にかけて重苦しい鈍痛が続くのが特徴です。
眼精疲労や精神的なストレスも、筋肉の緊張を強める要因になるとされています。
歯や顎関節の問題による影響
歯の痛みを伝える神経(三叉神経)は頭全体に広く分布しているため、虫歯や歯並びの異常による刺激を、こめかみの痛みとして感じることがあります。
特に、奥歯の痛みがこめかみの痛みとして感じられるケースが多いとされています。また、片側だけで噛む癖や噛み合わせの異常があると、顎関節症につながることもあるでしょう。
こめかみには顎を閉じる役割を持つ側頭筋が付着しているため、顎関節の炎症やこわばりが、こめかみの痛みとして現れることもあるとされています。
顎を開け閉めするとクリック音がする、口を大きく開けにくいといった症状を伴う場合は、顎関節の問題が関係している可能性があります。
副鼻腔炎による影響
副鼻腔に炎症が起こる副鼻腔炎(蓄膿症)でも、こめかみを含めた頭痛が生じることがあります。
アレルギー性鼻炎を持つ方に起こりやすいとされ、慢性化すると、花粉の季節などに頭痛が続くこともあるでしょう。
鼻づまりや鼻水、頬や額の重さを伴う場合は、副鼻腔炎が関係している可能性があります。
こめかみが痛い場合に可能性がある病気

こめかみの痛みの多くは心配の少ないものですが、痛みの性質や伴う症状によっては、病気が関係している可能性があります。
ここでは、こめかみが痛いときの病気の可能性について解説します。
片頭痛
片頭痛は、血管の拡張が関係していると考えられている頭痛です。
片方のこめかみから目にかけてズキズキと脈打つように痛むことが多く、体を動かすと悪化しやすいことが特徴です。
痛みに加えて、光や音への過敏さ、吐き気を伴うこともあります。
寝不足のほか、ストレスや天候・気圧の変化によっても起こるとされ、繰り返し発症する方も少なくありません。
三叉神経痛
三叉神経痛は、顔の感覚を脳に伝える三叉神経が、血管などによって圧迫されることで生じる神経痛です。
こめかみを含む顔の片側に、ピリッと電気が走るような、発作的な鋭い痛みが特徴です。
洗顔や会話、歯磨きといった動作がきっかけで痛みが誘発されることがあり、痛みのない時間をはさみながら発作を繰り返すこともあります。
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
側頭動脈炎は、こめかみを通る側頭動脈に炎症が起こる病気です。
50歳以上の方に多いとされ、こめかみの血管が拡張して浮き出て見える、押すと痛むといった症状に加えて、倦怠感や微熱を伴うこともあります。
進行すると視力に影響が及ぶ可能性もあるとされており、注意が必要な病気です。
群発頭痛
群発頭痛は、片方の目の奥やこめかみに、突き刺すような激しい痛みが生じる頭痛です。
ある期間に集中して症状が起こることが特徴で、1〜2ヶ月にわたって連日痛みが続く場合もあるとされています。
脳血管疾患・脳腫瘍
頻度としてはまれですが、くも膜下出血や脳出血などの脳血管疾患、脳腫瘍でも、こめかみを含む頭痛が現れることがあります。
くも膜下出血では、これまでに経験したことのない激しい痛みが、突然生じることが特徴とされています。
脳腫瘍による頭痛は、徐々に悪化していく傾向があるとされ、他の頭痛とは異なる経過をたどることがあります。
手足のしびれや麻痺、視力低下、意識がはっきりしないといった症状を伴う場合は、命に関わる可能性があるため、迷わず救急外来を受診する必要があります。
こめかみが痛いときにできるセルフケア

こめかみの痛みの多くは、生活習慣の見直しやセルフケアによって和らぐことがあります。ここでは、自分でできる主な対処法を解説します。
痛みの種類に応じて冷やす・温めるを判断する
片頭痛のようにズキズキと脈打つ痛みの場合は、患部を冷やして安静にすることで痛みが和らぐことがあります。
一方、緊張型頭痛が疑われる場合は、首や肩を温めることで血流が改善し、筋肉の緊張がほぐれて痛みが和らぐことがあります。
痛みの種類によって適した対処が異なるため、どちらか判断がつかない場合は、無理に対処せず様子を見ることも大切です。
姿勢を見直し、こまめに休憩を取る
長時間同じ姿勢を続けることは、首や肩、こめかみ周辺の筋肉に負担をかける大きな要因です。
デスクワークやスマートフォンの操作を続けている場合は、1時間に1回程度を目安に休憩を挟み、姿勢を変えることを心がけましょう。
パソコンの画面の高さを調整したり、スマートフォンを目線の高さに近づけたりすることも、首や肩への負担軽減につながります。
誘因となる生活習慣を見直す
片頭痛が疑われる場合、睡眠不足や寝過ぎ、空腹、ストレス、アルコール、特定の食べ物(赤ワイン、チーズ、チョコレート、コーヒーなど)が誘因になることがあるとされています。
自身の生活習慣を振り返り、誘因になりやすいものを避けることで、発症を抑えられる場合があります。
市販の痛み止めの使用
片頭痛や緊張型頭痛では、市販の鎮痛薬で痛みが和らぐこともあります。
ただし、痛み止めを頻繁に使用し続けると、かえって頭痛が悪化する場合があるとされており、自己判断での連用は避けましょう。
痛みが続く場合や、市販薬で改善しない場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談してください。
こんな場合は医療機関を受診しましょう

こめかみの痛みの多くは心配の少ないものですが、以下のような症状がある場合、命に関わる病気が関係している可能性があります。
- 突然、これまでに経験したことのない激しい痛みが起こった
- 手足のしびれや麻痺、視力低下を伴う
- 痛みが日ごとに徐々に悪化している
- 意識がはっきりしない、強い吐き気や嘔吐を伴う
- こめかみの血管が浮き出て見える、押すと強く痛む(倦怠感や微熱を伴う場合)
上記に該当する場合は、自己判断で様子を見ず、直ちに医療機関を受診してください。
一方で、以下のような場合は、緊急性は低いものの、医療機関での相談をおすすめします。
- ピリッと電気が走るような痛みが繰り返し起こる
- 痛み止めを使っても改善しない、または頻繁に使用している
- 片側だけに痛みが続く、または数日経っても改善しない
- 顎を開け閉めするとクリック音がする、口を開けにくい
こめかみの痛みでよくあるご質問

ここでは、こめかみの痛みに関するよくある質問を紹介します。
何科を受診すればよいですか?
片頭痛や三叉神経痛が疑われる場合は、当院の痛み外来にてご相談いただけます。
突然の激しい痛みや、しびれ・視力低下などの症状を伴う場合は、脳神経外科など専門の医療機関を受診してください。
こめかみの痛みは自然に治りますか?
生活習慣が関係するものであれば、誘因を避けることで軽減する場合もありますが、繰り返す場合や長引く場合は、原因を確認するため受診をおすすめします。
三叉神経痛はどのような治療を受けられますか?
症状に応じて、内服薬による治療や神経ブロックなどを検討します。詳しくは診察時にご説明します。
痛み止めはどのくらいの頻度で使ってもよいですか?
市販薬を頻繁に使用し続けると、かえって頭痛が悪化することがあります。使用頻度が増えている場合は、自己判断を避け、医療機関にご相談ください。
歯の痛みがないのに、歯や顎が原因のことはありますか?
歯の痛みを伝える神経は頭全体に分布しているため、自覚症状がなくても、噛み合わせや顎関節の状態が影響していることがあります。気になる場合は歯科での相談もおすすめします。
まとめ
こめかみの痛みは、多くの場合、片頭痛や緊張型頭痛といった、血管や筋肉の緊張によるものです。
一方で、まれに側頭動脈炎や脳の病気が隠れていることもあり、痛みの現れ方によっては注意が必要です。
突然の激しい痛みや、しびれ・視力低下などの症状がある場合は、直ちに医療機関を受診してください。
はるみクリニックの痛み外来では、片頭痛や三叉神経痛などの症状と真剣に向き合い、診断結果に応じて適切な治療をご提案しています。また、必要に応じて脳神経外科など他診療科と連携することもあります。
こめかみの痛みが繰り返し起こる、電気が走るような痛みがあるといった方は、現在の症状についてお気軽にご相談ください。