薬を飲んでも治らない痛みやしびれに悩まされている方で、「神経ブロック注射が有効なら受けてみたい」と思ったことはありませんか。
神経ブロック注射は、痛みを伝える神経の近くに薬剤を注射し、神経の興奮を一時的に抑える治療法です。
混同されやすい治療としてトリガーポイント注射もあるため、施術前に適応する症状や目的を知っておくと、スムーズな診療につながります。
この記事では、神経ブロック注射の仕組みや種類、対象となる症状、施術の流れやリスク、トリガーポイント注射との違いについて紹介します。
神経ブロック注射とは何か

神経ブロック注射は、痛みを引き起こしている神経やその周辺に局所麻酔薬などを注射し、神経の伝達を一時的に遮断する治療法です。
特定の部位に痛みが集中し、湿布や内服薬を続けても改善が見られない場合、神経の働きそのものに着目した治療が検討されることがあります。
神経を切断するわけではなく、痛みの情報が脳へ伝わる経路を一時的に止めるのが目的です。
痛み外来(ペインクリニック)や整形外科、麻酔科など、痛みの治療を専門とする診療科で行われることが多い処置です。
神経ブロック注射による治療のメカニズム

神経ブロック注射がどのように痛みを和らげるのか、その働き方を三つの視点から説明します。
神経の伝達をブロックする作用
神経が痛みを感じ取ると、その情報は電気信号として神経線維に伝わり、脳へ届きます。
この伝達経路に対して、神経ブロック注射で局所麻酔薬を作用させると、信号を運ぶナトリウムチャネルの働きが一時的に抑えられます。
その結果、電気信号が伝わりにくくなり、脳へ届く痛みの情報が少なくなる仕組みです。
痛みが痛みを呼ぶ悪循環を断つ働き
強い痛みが続くと、痛みを感じる神経自体が過敏になり、わずかな刺激でも強く痛みを感じるようになることがあります。
こうした状態は、「痛みの悪循環」と呼ばれ、慢性的な痛みが長引く一因になると考えられています。
神経ブロック注射で痛みの伝達を一時的に遮断すると、過敏になった神経が落ち着きを取り戻しやすくなるという考え方です。
悪循環を早い段階で断つことは、痛みが慢性化するのを防ぐ目的のひとつとされています。
内服薬や湿布との作用の違い
内服薬は血流に乗って全身に作用するため、痛みの原因部位以外にも影響が及びやすい薬剤です。
湿布は皮膚表面から薬効成分を浸透させる仕組みで、筋肉の深い部分や神経そのものに直接働きかけることは難しいとされています。
一方、神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経そのものに薬剤を届けられる点が特徴です。そのため、内服薬や湿布で十分な効果が得られない場合の選択肢として検討されることがあります。
部位や症状に応じたブロックの種類

神経ブロックにはさまざまな種類があり、痛みが生じている部位によって用いられる方法が異なります。
ここでは、部位別に適応しうるブロックの種類と特徴を解説します。
星状神経節ブロック(頭部・顔面など)
星状神経節は首の付け根付近に位置し、頭部や顔面、上肢の血流や神経の働きに関わっています。
星状神経節ブロックは、この神経節の周囲に局所麻酔薬を注射し、交感神経の過剰な緊張を鎮める方法です。
例えば、緊張型頭痛や顔面神経麻痺、上肢のしびれなど、幅広い症状に用いられることがあります。
血流の変化を伴う治療のため、注射後にしばらく安静にして経過を観察する場合があります。
肩甲上神経ブロック(肩の周囲など)
肩甲上神経は、肩関節の周囲や肩甲骨まわりの筋肉に広く分布している神経です。
肩甲上神経ブロックは、この神経の周辺に薬剤を注射し、肩関節の痛みや可動域の制限を和らげることを目的として行われます。
四十肩や五十肩と呼ばれる症状、肩関節周囲炎に伴う夜間の痛みなどが対象になることがあります。
肩の動かしにくさが強い場合は、リハビリと並行して検討されることも少なくありません。
硬膜外ブロック(腰やお尻から足に響く痛みなど)
硬膜外ブロックは、脊髄を包む硬膜の外側にある硬膜外腔と呼ばれる空間に、局所麻酔薬を注入する方法です。
腰椎付近で行うことが多く、腰から殿部、太ももにかけて響く痛みやしびれに用いられることがあります。
例えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に伴う神経の圧迫による痛みが、対象となる症状の代表例です。
広い範囲に薬液が行き渡りやすいため、複数の神経にまたがる痛みに対応しやすいとされています。
神経根ブロック(下肢のしびれなど)
神経根ブロックは、脊髄から枝分かれした神経根と呼ばれる部分をねらって、局所麻酔薬を注射する方法です。
硬膜外ブロックよりも狙う神経を絞り込むため、特定の神経が支配する範囲に症状が現れている場合に選ばれやすい方法です。
坐骨神経痛のように、特定の神経に沿って下肢へ痛みやしびれが広がるケースが対象になります。
画像検査で神経の圧迫が確認された場合に、診断や治療を兼ねて行われることもあります。
帯状疱疹後神経痛に用いられるブロック
帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスが神経に沿って再活性化することで、皮膚の発疹とともに強い痛みを引き起こす疾患です。
発疹が治まった後も痛みだけが残る状態を帯状疱疹後神経痛と呼び、原因となっている神経の近くに神経ブロック注射を行い、痛みの慢性化を防ぐことが試みられます。
発症から治療開始までの期間が短いほど、神経痛へ移行しにくくなる傾向にあるため、早めの相談が大切です。
神経ブロック注射による治療のステップ

神経ブロック注射を受ける際の流れを、問診から施術完了までわかりやすく説明します。
問診と画像検査で適応を判断
来院後はまず問診が行われ、痛みの部位や期間、強さ、日常生活への影響などを具体的に確認します。
必要に応じてMRIやレントゲンなどの画像検査を行い、神経の圧迫や骨・椎間板の状態を調べることがあります。これらの情報は、神経ブロック注射が適切な治療かどうかを判断する材料です。
持病や服用中の薬、アレルギーの有無についても、この段階で申告することが必要です。
超音波やX線を使った位置の確認
神経ブロック注射は、狙った神経に正確に薬剤を届けることが求められる処置です。
そのため、超音波(エコー)やX線透視といった画像装置を用いて、針の位置を確認しつつ進める方法が広く用いられています。
画像で神経や血管の位置を確認しながら針を進めることは、周囲の組織を傷つけるリスクを抑えるうえで重要な工程です。
部位によっては、造影剤を使って薬液の広がり方を確認する場合もあります。
消毒・局所麻酔・薬剤の注入
施術では、注射する部位を消毒し、必要に応じて皮膚やその周囲に局所麻酔を行います。
超音波やX線透視で針先の位置を確認しながら、痛みの原因と考えられる神経の近くまで針を進め、局所麻酔薬や抗炎症薬などを注入する流れです。
X線透視を使用する場合は、造影剤で薬液が広がる位置を確認してから注入することがあります。
注射中に痛みが強い、しびれが広がる、気分が悪いなどの変化があれば、我慢せず医師やスタッフへ伝えてください。
注射から経過観察までの時間
神経ブロック注射自体にかかる時間は、多くの場合数分から十数分程度です。
針を刺入する際に一時的な痛みや圧迫感を伴うことがありますが、局所麻酔を併用して行われる場合もあります。
注射後は、めまいやふらつきが起こらないか確認するため、しばらく院内で安静にして経過をみることが一般的です。
血圧の変動がみられる場合は、回復するまで横になって休むよう案内されることがあります。
神経ブロック注射後の経過と再施術の間隔

施術後、効果がどのように現れ、どの程度繰り返し治療が必要になるのか、目安を紹介します。
麻酔が切れたあとに起こる変化
注射を受けた直後は、薬剤の作用によって痛みが引いたように感じられます。
数時間が経過して麻酔の効果がなくなると、針を刺した場所に鈍い痛みや張りを覚えることがありますが、翌日以降には落ち着いていくのが一般的な経過です。
まれに血圧の変動によるふらつきや、体のだるさが出ることもあるため、施術当日は激しい運動や長時間の入浴を避けてください。
なぜ効果の続く期間に差が出るのか
神経ブロック注射によって痛みが落ち着いている期間は、患者様によって異なります。
差が生まれる背景には、「神経の炎症がどの程度進んでいるか」「痛みが始まってからの経過期間が長いか短いか」といった要因が関係しています。
発症から早い段階で治療を始めた方は、数か月単位で症状が安定するケースもあります。
一方、痛みが慢性化してから治療を開始した場合、効果を維持するために複数回の通院が必要になることがあります。
次の施術を検討するタイミング
神経ブロック注射を繰り返す場合、一般的には数日〜2週間程度の間隔を空けることが推奨されます。
短期間で同じ部位に注射を繰り返すと、組織への負担が大きくなる可能性があるからです。
症状が軽度であれば数回の施術、慢性的な痛みでは継続的な通院を勧められることがあります。
施術の間隔や回数については、医師が経過を確認しながら適切に判断します。
神経ブロック注射で注意したいリスク

神経ブロック注射は、痛みの原因となる神経やその周囲に薬剤を注入する治療です。
注射を伴うため一定のリスクはありますが、事前に既往歴や服用薬を確認し、治療部位に応じて適切に行うことで、リスクを抑えるための対応が取られます。
- 注射部位の痛み、腫れ、内出血、血腫
- 感染
- 一時的なしびれ、脱力感、神経への刺激・損傷
- 血管内への薬剤注入による局所麻酔薬中毒
- 薬剤によるアレルギー反応
- 部位によっては、気胸や硬膜穿刺など
症状の多くは一時的ですが、強い痛みが続く、しびれや力の入りにくさが改善しない、発熱・息苦しさ・意識の変化がある場合は、施術を受けた医療機関へ速やかに連絡してください。
抗凝固薬・抗血小板薬の服用、アレルギー歴、出血しやすさは治療に影響するため、事前の診察で医師へ伝えましょう。
神経ブロック注射とトリガーポイント注射の使い分け

神経ブロック注射とトリガーポイント注射は、どちらも痛みの緩和を目的としますが、狙う対象や適応となる症状が異なります。
ここでは、両者の使い分けについて詳しく解説します。
狙う対象(神経・筋肉)の違い
神経ブロック注射は、痛みを伝えている神経そのものやその周囲に薬剤を届け、神経の伝達を一時的に遮断する治療法です。
一方、トリガーポイント注射は、筋肉や筋膜にできた圧痛点に薬剤を注射し、筋肉の過度な緊張をゆるめることを目的としています。
同じ注射でも、神経を標的にするか筋肉を標的にするかという点で、アプローチする対象が根本的に異なります。
どちらの治療法が適しているかは、痛みの発生源が神経にあるか筋肉にあるかによって医師が判断するものです。
向いている症状の違い
神経ブロック注射は、帯状疱疹後神経痛や坐骨神経痛のように、特定の神経に沿って痛みやしびれが広がる症状に適した治療です。
一方、トリガーポイント注射は、肩こりや腰の張りのように、筋肉の緊張が原因となっている痛みに向いている治療法とされます。
しびれを伴う痛みや、画像検査で神経の圧迫が確認されている場合は、神経ブロック注射が検討されやすい傾向にあります。
押すと強く痛む場所がはっきりしている場合は、トリガーポイント注射が候補にあがることもあります。
診察前に医師へ伝えておきたいこと

ここからは、神経ブロック注射をスムーズに検討してもらうために、来院前に整理しておきたい情報を紹介します。
症状の経過を具体的に伝える準備
痛みやしびれがいつから始まり、どのように変化してきたかは、原因を絞り込むうえで重要な情報です。
「安静にしていても痛むのか」「特定の動作で痛みが強くなるのか」など、痛みが出る状況を具体的に振り返っておきましょう。
「痛みの範囲がどこまで広がっているか」「しびれを伴っているかどうか」も、担当医に伝えておきたいポイントのひとつです。
こうした情報をメモ帳やスマートフォンのメモに整理しておくと、問診から検査、治療の検討がスムーズに進みやすくなります。
これまで試した治療法を整理しておく
湿布や内服薬、リハビリなど、これまでに試した治療法とその効果の有無を整理しておくと、治療方針を検討する際の参考になります。
特に、「どのくらいの期間、どの程度の量を試したか」という情報は、次の治療を選ぶうえで参考にされることがあります。
他の医療機関で受けた検査結果や画像データは、持参しておくとよい資料です。お薬手帳やアレルギー歴についても、あわせて準備しておいてください。
まとめ
神経ブロック注射は、痛みを伝える神経に直接働きかけることで、内服薬や湿布では改善しにくい痛みの緩和を図る治療法です。
効果の持続期間には個人差があり、症状によって適した種類や治療の間隔も異なります。
「はるみクリニック」は、体が発する「痛み」を大切なサインとして捉え、症状に応じた適切な治療をご提案するペインクリニックです。
患者様一人ひとりの症状や画像所見をもとに、神経ブロック注射やトリガーポイント注射など、具体的な治療を丁寧にご案内します。
神経に沿って響く痛みやしびれなど、つらい症状にお悩みの方は、この機会に当院までお気軽にご相談ください。